2021年9月17日(金) 13時 オンライン開催 
再生・細胞医療セッション プログラム・抄録

13:00 - 13:05   ご挨拶および本セミナーに関するご案内


​13:05 ‐ 13:50   
「細胞培養における培地成分の測定の意義と事例」

演者:紀ノ岡 正博 先生   大阪大学 大学院工学研究科 教授  

≪講演概要≫
 

細胞培養中の種々の計測は,細胞状態・培養状態を把握するうえで重要な事項であり,細胞特性を直接把握するための細胞計測と細胞周りの情報を間接的に取得する環境計測と分けられます.細胞計測は,細胞状態や培養状態を直接把握できることが多く,空間的,時間的な分解能が高い方法となります.多くは襲撃的な手法であり,培養中のモニタリングには適しておらず,非侵襲的な細胞計測として,細胞形態観察があるにとどまっております.一方,環境計測は,非侵襲的手法として培地成分分析が知られており,細胞数の測定,培養環境の逸脱検出,分化方向性の逸脱検出などへの適用が期待されております.
培養を「誰でも「熟練者であろうが素人であろうが,機械であろうが」上手に行うことは重要であり,「上手下手を見極める」,「上手に実施する」ための手法の開発が重要で,「細胞の気持ち」を知り,かつ判断できる研究者により開発される必要があると考えております.
本講では,上手下手を見極めるための手段として,環境計測の一つである培地成分変化に着目し,その活用を紹介します.特に,細胞の気持ちの捉え方,培地の役割,得られた培地成分変化の捉え方,私どもの培地成分計測の経験をもとに,細胞状態・培養状態の把握に対する培地計測の可能性について紹介します.

 


​13:50 ‐ 14:30 
「多能性幹細胞および分化細胞の代謝機構を基盤とした心臓再生医療」

演者:遠山 周吾 先生 | 慶應義塾大学医学部循環器内科 専任講師

≪講演概要≫
 

ヒトiPS細胞は体を構成する様々な細胞に分化する能力を有するため、再生医療への応用が期待されている。一方で、ヒトiPS細胞を用いた再生医療における臨床応用を実現化するためには多くの課題を克服する必要がある。再生医療における最も重要な課題の1つは、分化後に残存する未分化幹細胞を取り除く技術の確立であった。我々はこれらの課題に対して、ヒトiPS細胞と分化心筋細胞の代謝プロファイルを詳細に解析することにより、培養環境により分化後に残存する未分化幹細胞を取り除き、分化心筋細胞のみを効率よくかつ大量に純化精製するという画期的手法を構築することにより克服してきた (Tohyama, Cell Stem Cell 2013, Tohyama, Cell Metabolism 2016)。
しかしながら、依然として重要な課題が存在する。ヒトiPS細胞を用いた再生医療における臨床応用さらには産業化を実現化するには大量の細胞を作製する必要があるが、それに伴い多くのコストが発生するため、効率よくヒトiPS細胞を増殖させる必要がある。その課題に対して、我々はヒトiPS細胞のアミノ酸代謝を理解することで簡便にヒトiPS細胞の増殖を促進させる培養環境を同定した (Someya, Tohyama, iScience 2021)。また、ヒトiPS細胞由来分化心筋細胞を大量生産するために、我々は強制換気システムと多層培養プレートを用いた2次元大量培養系を構築し、一度に約10億個の心筋細胞の作製が可能となった (Tohyama, Stem Cell Reports 2017, Terao, Tohyama, Scienctific Reports 2019)。
さらに、循環器領域に限らず、再生医療の様々な領域において残存する未分化幹細胞による腫瘍化が問題になっており、様々な領域にも応用可能な残存未分化幹細胞除去法が求められていた。こちらの課題に対しても、腫瘍化リスクのある未分化幹細胞に特異的な脂肪酸代謝を制御することにより、さまざまな領域に応用可能な未分化幹細胞特異的除去法を確立した (Tanosaki, Tohyama, iScience 2020)。
様々な解析手法を効果的に活用し、代謝機構を明らかにすることで、再生医療の臨床応用及び産業化を大きく推進させる成果をもたらすものと確信している。本講演では、我々が取り組む多能性幹細胞の代謝機構に着目したアプローチを紹介したい。

 


14:35 ‐ 15:20  

「ロート製薬の再生医療の取組み」 

演者:小池 哲央 先生 | ロート製薬株式会社  再生医療研究企画部 

≪講演概要≫
 

 ロート製薬では、世の中を健康にするために、どんな困難にもめげず、常識の枠を超えてチャレンジし続けるため「Never Say Never」という新スローガンを制定し、一般用医薬品(OTC)や化粧品の開発に加えて、「健康と美に関する、あらゆるソリューションを提供する会社」を目指して「Connect for Well-being」という経営ビジョンを策定し、世界の人々が、できるだけ長い時間、Well-beingを感じることができるように、薬だけに頼らない製薬会社として、既存の医薬品やスキンケアのみならず、健康の基本である食やレストラン事業など日常のライフスタイルから再生医療などのライフサイエンスの先端までに事業領域を拡げている。
当社では以前より眼科領域や皮膚科領域での基礎研究において、角膜上皮細胞や皮膚表皮細胞、線維芽細胞など種々の細胞を用いた試験や蛋白質や遺伝子の網羅的解析、動物での安全性、有効性評価を実施している。また無菌医薬品である点眼剤の生産では、GMP対応での無菌管理、自動生産技術を有しており、これらの技術基盤を基に再生医療等製品の開発に着手した。
医薬品医療機器等法が施行されて以降、いくつかの再生医療等製品が承認販売されており、今後市場が拡大していくことが期待されるが、ますます再生医療を普及させ、実用化を促進するためには、安定して高品質な再生医療等製品を低価格で提供する必要があり、そのための課題が山積みの状況である。
2014年にiPS細胞由来のヒト網膜上皮細胞を用いた加齢性黄斑変性症の治療が日本で初めて行われ、iPS細胞を利用した細胞由来製品の開発が注目を浴びているが、海外では体性幹細胞を利用した細胞製剤の開発が先行している。多能性幹細胞からの分化誘導には高度な技術や工程管理が求められ、長期間の培養が必要となる等、実用化には大きなハードルが存在する。
このような背景から、ロート製薬では再生医療等製品の開発において間葉系幹細胞を用いることが最もリスクが低いと考え、他家(同種)脂肪組織に由来する間葉系幹細胞を用いた再生医療等製品を開発することとした。
再生医療の実用化に向けて、品質・安全性面での課題としては、ヒト試料等製品原料の品質安定化、細胞製造工程の安定化、動物由来ウィルスの感染リスク低下等があり、製造・労働環境面の課題としては、培養士スキルの均質化、大量生産、製造コストの適正化等があり、これらの課題解決に向けた無血清培地の開発、自動培養装置の開発などの取組みについて紹介する。

 

15:20 ‐ 15:30  全体質疑応答


15:30 ‐ 15:45  テクニカルセッション 
培地交換機能付きCO2インキュベータ「CellKeeper」の紹介

演者: 田中 健之 様
ローツェライフサイエンス株式会社 営業部 課長


 ≪講演概要≫
創薬スクリーニングや再生医療にとって細胞は重要な材料です。しかしながら、細胞は生き物であり、培養には複数のマニュアル工程が関わるといった一般的な材料とは異なる特質があります。マニュアル工程は数値化が難しく変動要因に繋がりますが、産業化を進めるには一定品質の材料が必要です。
当社CellKeeperシリーズは、指定したタイミングでの培地交換や位相差顕微鏡での撮像が可能なCO2インキュベーターです。機械化により、培地交換工程の複数ファクターを設定できるため、一定品質の細胞の安定的な供給に大きく貢献します。

 

15:45 - 16:00  メーカーセッション

オンラインオートサンプリング機能で更なる飛躍、細胞環境分析装置BioProfile FLEX2の紹介

演者:大渕 徹
ノバ・バイオメディカル株式会社  営業部
バイオテクノロジー営業グループ 西日本営業マネージャー

≪講演概要≫

細胞培養環境多項目同時分析装置「BioProfile FLEX2」にオンラインサンプリング、並びにサンプル分取システムの機能が追加できるようになりました。
オンラインサンプリングでは最大10台のバイオリアクター(ベンチトップ型還流培養槽、シングルユースリアクターなど)の接続が可能となります。
プログラミング制御で10台のリアクターの分析時間を設定でき、また任意のタイミングでコマンドにより手によるサンプリングの必要なく、分析が可能となります。
サンプル分取システム(Sample Retain Collector)ではリアクターからのサンプルの一部を、長期保管並びに他の分析方法に利用できるように分取します。これらの機能は今お使いのFLEX2にも増設可能です。

 

 

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