2021年9月14日(火) 13時 オンライン開催 
バイオ医薬品セッション プログラム・抄録

13:00 - 13:05   ご挨拶および本セミナーに関するご案内


​13:05 ‐ 13:50   「バイオ医薬品製造技術の最新動向」

演者:岡村 元義 先生 | 株式会社ファーマトリエ 代表取締役

≪講演概要≫
 

バイオ医薬品が初めて世に出てから40年余りが経過したが,その間モノクローナル抗体が中心的な役割を果たし,がん,関節リウマチなどの難病治療に多大な貢献をしてきた。特にリツキサン®,ハーセプチン®などのがん治療抗体,あるいはレミケード®,ヒュミラ®のような関節リウマチ治療抗体において,それまでの低分子薬では治療効果のなかった難治疾患において著しい効果を上げてきた。また,長期間販売されている大型バイオ医薬品は独占販売の特許が切れ,バイオ後続品(バイオシミラー)も次々に販売されている。一方バイオ医薬品は開発コストや製造コストが高く,低分子薬に比べ非常に高い薬価がついているため,アンメットニーズの状態が続いており,バイオ医薬品の利用率を高めるためには,安価なバイオ医薬品の出現が求められている。
CHO細胞は,細胞増殖性や目的タンパク質の生産性が高く,ゲノムもほぼ解明されており,モノクローナル抗体の生産では最適な細胞株である。このCHO細胞を用いた医薬品の培養法および精製法の基本プロセスはプラットフォーム化されており,培養プロセスについては高発現へ培養法の改良により5g/L以上の高生産が可能となってきている。高生産に改良できれば,グラムあたりの製造原価は安くなり,モノクローナル抗体医薬品の普及率が上がることになる。
連続培養は,高生産培養を長期間維持させることにより製造コスト削減を目指した培養法であるが,培養が長期間となる事によりランニングコストが増えてしまって,コスト削減の目的を達成できていないというデメリットがある。また連続培養は長期間になるため,培養期間を通しての品質の一貫性を示すための多角的な検証が必要である。
モノクローナル抗体の精製工程において,Protein Aアフィニティクロマトグラフィーが欠かせないが,その後のクロマトグラフィー工程については,抗体ごとの最適化検討が必須である。ひとくちにモノクローナル抗体といっても等電点(pI)は12から7まで実に様々であるため,宿主由来タンパク質(HCP)などの工程由来不純物や凝集体を分離除去する条件は個別の最適化検討が必要である。
培養と精製は独立した製造工程ではなく,常に両工程をリンクさせて進めるべきであり,どのような培養条件にしたら,精製工程の負荷が低減され,目標製品品質(QTPP)を達成できるかを考えながら製造することが重要であり,その実行にはICH Q11ガイドラインに示された重要品質特性(CQA)とプロセス評価の手法が有効である。

 


​13:50 ‐ 14:30  「遺伝子治療用製品の製造と課題」

演者:岡田 尚巳 先生 | 東京大学 医科学研究所 ・遺伝子・細胞治療センター 教授/センター長
 

≪講演概要≫


がんや難治性遺伝性疾患に対する遺伝子治療用製品の開発は、分子病態に基づく明確な作用機序と臨床的効果から高い注目を集めている。レンチウイルスベクターを活用した遺伝子導入細胞CAR-TやAAVベクターが欧米を中心に開発され、既に様々な製品が国内外で上市されている。遺伝子治療研究はアカデミアを中心に発展してきた研究分野だが、近年の市場化に伴い、抗体医薬や組換え生ワクチンなどバイオロジクス産業の考え方が導入されている。米国食品医薬品局(FDA)は、バイオロジクス業界におけるProcess Analytical Technologyの活用を推進しており、製造過程での継続的な培地分析や自動制御が国際的に重要度を増している。FDAで発出された遺伝子治療用製品の製造指針では、Chemistry, Manufacturing, and Control(CMC)に関する項目において、抗体医薬の考え方が重視されており、本邦の規制もその方針に倣うと想定される。その背景には、遺伝性疾患に対する遺伝子治療の非臨床試験や臨床試験において、安全性に関する様々な懸念が指摘されていることがある。AAVベクターの全身大量投与を行う治療においては重篤な肝障害や神経障害が発症し、死亡事例も報告された。また、レンチウイルスベクターのin vivo治療としての使用も期待されており、AAVベクターと同様にCMCの考え方がより厳格になると予想される。このため、遺伝子治療用製品の生産性、コスト、安全性の改良に向け、培地分析などにおける工程管理パラメーターの目標を設定し、合理的にリスクを回避するQbDの考え方が導入されている。ただし、大量生産の実施には事前に重要品質特性CQAの目標が適切に設定されていることが必要であり、プロセス開発での発現培養や生産培養における培地分析は極めて重要である。本セミナーでは、臨床開発の様々な事例や製造プロセス開発の動向について紹介する。

 


14:35 ‐ 15:20  

「Chinese hamster ovary(CHO)細胞の安定性と不安定性について考える」

演者:大政 健史 先生 | 大阪大学 大学院工学研究科 生物工学専攻 

≪講演概要≫

株化細胞(細胞株:cell line)とは、もともと有限寿命である動物細胞が生体外に取り出されて培養しているうちに、生体であったころの機能の一部を失うものの無限増殖能をもち、あたかも微生物の培養のように、増殖させて増やすことができるようになったものを指す。遺伝子組換え技術の発達により、この株化細胞においても、組換え微生物のように、外来の遺伝子を組み込み、外来蛋白質を分泌生産させることが可能となっている。特に、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(Chinese hamster ovary(CHO)細胞)は、その使いやすさや、応用例の多さなどの理由によって、多数のバイオ医薬品の生産宿主として活用されている。CHO細胞に関わる細胞構築・培養技術をまとめると、大きく細胞そのもの性能向上に関わるセルエンジニアリング(①細胞株の安定性と多様性、そして②動物細胞における細胞内反応場の設計によって細胞当たりの生産性を高めるアプローチ)と、③生産細胞を如何に高密度にかつ長時間生産させるかという細胞培養プロセスの高度化によるアプローチと捉えられる。さて、動物細胞を用いたバイオ医薬品生産には、大腸菌や酵母のような単細胞微生物を用いた物質生産と大きく異なる点が①細胞株の安定性と多様性の解明に関する課題である。細胞株は生体から取り出した有限寿命の初代細胞とは異なり、無限に増やすことが可能であるが本質的に多様性と不安定性をもち、これが物質生産系のデザインを難しくしている。本講演ではこの多様性と不安定性に焦点をあてて、講演者が行ってきた研究を紹介したい。

1.    Takeshi Omasa and Kyoungho Lee "3.2 Chromosome rearrangement and gene amplification" in Animal Cell Technology (Roland Wagner and Hansjörg Hauser (eds.) )pp.127-142 Walter de Gruyter GmbH (2014) 
2.    大政健史 “生物化学工学分野における動物細胞工学に関する研究” 生物工学会誌 vol.99, No.1, pp.15-22 (2021). DOI: 10.34565/seibutukougaku.99.1_15

 

 


 

15:20 ‐ 16:05  「動物細胞培養の連続化と培地消費」

演者:村上 聖 先生 | 次世代バイオ医薬品製造技術研究組合 

≪講演概要≫

抗体医薬に代表される拮抗薬は作用薬に比較して大量の投与を必要とする。また、低分子医薬品に比べてバイオ医薬品の生産コストは高額であり、医療費抑制、患者負担軽減のためバイオ医薬品の生産コスト低減、生産性の向上が強く望まれている。現在ほとんどの抗体医薬生産で用いられている動物細胞培養による生産は、細胞へのダメージを抑制しながら栄養素や代謝物の物質移動を最適化することを中心課題として長年技術開発が進められてきた。今後品質・生産性をさらに向上させるためには、タンパク質発現機能を更に向上させた高機能細胞の培養条件の充足や、培養液からの高度精製を支援する抗体分子変性・不純物発生抑制を可能にする培養技術が必要となる。
高品質、高生産性を目的とした培養工程の連続化のほとんどは、パーフュージョン(灌流)培養と呼ばれる方式で行われてきたが、近年までは 一部の不安定な生産物を除き、実生産で広く普及することはなかった。しかしながら、ここ数年の間に各種方法の研究や製品化が進展している。次世代バイオ医薬品製造技術研究組合では、培養プロセスの高品質化と高効率化を両立する灌流培養システム構築を目的に、国産オリジナル高性能細胞であるCHO-MK細胞を用いた最適化培地、スクリーニング・生産用灌流培養システムを開発し、増殖速度調整手法構築、栄養成分・代謝物の最適化を行った。また、各要素技術開発と並行して神戸GMP集中研施設を活用し、先行技術であるバッチ/連続レファレンス技術ならびに本事業での新規開発技術を適宜導入してインテグレート型連続プロセスによるモデル抗体の製造実証試験を行った。
生産性の検討においては、培養槽容積あたり、ならびに消費培地あたりの二つの抗体生産性指標に着目して検証を行い、それぞれについて生産性向上を図り、灌流培養の弱点であった消費培地あたりの抗体生産性を改善させることで総合的な製造コストの低減の見通しを得た。品質の検討では、外的要因である滞留時間と内的要因である細胞比増殖速度が抗体品質(電荷異性体、糖鎖修飾)に与える影響を解析し、適切な灌流培養によって抗体品質向上が図れることを示した。さらに品質特性に与えるプロセスパラメータの影響について、従来の知見の拡充を目指し、AIを用いた網羅的解析を行い、新たな相関を導き出すための基礎的検討を行った。
本セミナーではこれらの成果の概要について説明する。

 


16:05 ‐ 16:15  全体質疑応答


16:15 ‐ 16:30  テクニカルセッション

代謝物モニタリングを完全自動化したマイクロバイオリアクターシステム -BioProfile FLEX2 とAmbr シリーズの最強タッグ Part 3-

演者:五十嵐 聖 様
ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社 
アプリケーションスペシャリスト(培養関連製品) バイオプロセスソリューション

≪講演概要≫

バイオ医薬品の興りから十数年、近年の製造のトレンドは大容量のフェドバッチから中容量のパフュージョン培養または高密度細胞培養に移行しつつある。これまでもプロセス開発の分野は重要な位置づけであったが、小型、ハイスループット、そして自動化されたシステムが求められている。
今回でPart 3となる本演題において、BioProfile FLEX2がどのように近年のニーズに呼応しているのかに注目して国内外の実施例などを紹介していく。

 

16:30 - 16:45  メーカーセッション

オンラインオートサンプリング機能で更なる飛躍、細胞環境分析装置BioProfile FLEX2の紹介

演者:大渕 徹
ノバ・バイオメディカル株式会社  営業部
バイオテクノロジー営業グループ 西日本営業マネージャー

≪講演概要≫

細胞培養環境多項目同時分析装置「BioProfile FLEX2」にオンラインサンプリング、並びにサンプル分取システムの機能が追加できるようになりました。
オンラインサンプリングでは最大10台のバイオリアクター(ベンチトップ型還流培養槽、シングルユースリアクターなど)の接続が可能となります。
プログラミング制御で10台のリアクターの分析時間を設定でき、また任意のタイミングでコマンドにより手によるサンプリングの必要なく、分析が可能となります。
サンプル分取システム(Sample Retain Collector)ではリアクターからのサンプルの一部を、長期保管並びに他の分析方法に利用できるように分取します。これらの機能は今お使いのFLEX2にも増設可能です。

 

 

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