時代の流れを作るぐらいの気持ちで、
医療の既成概念を超えていきたい

齊藤岳児先生は、救急災害医療の研究がご専門で、救急医・ DMATとして活動されています。挑んでいる新しい取り組みについて伺うとともに、一刻を争う命の現場でノバ・バイオメディカル(以下「ノバ」)製品をどのように活用しているか、今後期待することなどもお聞きしました。

(取材日 :2021 年 1 月)

浜松医科大学医学部附属病院

救急部副部長 齊藤 岳児 先生

救急医療現場での新たな取り組み

新たな心肺蘇生法、災害医療でのドローン活用を研究

浜松医科大学医学部附属病院は、一次救急から三次救急まで幅広く患者さんを受け入れています。年間に受け入れている救急車は約4,000台で、国公立の大学病院としては比較的多いのではないでしょうか。さまざまな専門科が充実しているため、救急で受け入れた後も安心していただける体制となっています。 救急部は、災害医療にも力を入れており、DMATとして各種不測の事態にも対応しています。2020年2月に発生したダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス感染の際も、当院のDMATメンバーが活動に参加しました。このように、救急医療と災害医療の両方に力をいれて取り組んでいます。

私自身のリサーチの一つとしては、新たな心肺蘇生法の開発を研究しています。もともと心肺蘇生は、手を組んで胸骨圧迫を行いますが、これは非常にハードな処置です。現場に遭遇した力や身体の弱い方、子ども、お年寄りが、心肺蘇生できるのかというと、なかなか難しいのが現状です。それを他の手法や技術で代替できないかを研究しています。その一つとして、台に乗り足で胸を押すという方法を提案し、論文で発表しました。海外のレビュアーからも多くの反応があり、女性ドクターなどからは一定の支持を受けています。この研究の成果によって、適切な心肺蘇生ができる人が増え、救命の可能性が広がればと思っています。

また、災害や救急の現場でのドローンの活用にもアプローチしています。
検体や医薬品、輸血用血液の搬送に、大型ドローンを活用する実証実験を関係機関と大学が連携して取り組んでいます。実績としては、富士山での登山者救護試験があります。富士山診療基地と要救助者のいる現場、ドローン発着地点のコミュニケーション方法、最適な医療機材の運搬、自律航行での搬送などを検証。険しい斜面でも迅速に機材を運搬でき、霧や夜間でも自律航行できる有効性などが確認されました。
今後は技術面だけでなく、どのルートを飛ばすのか、横断する土地や山地の所有者の許可はどうするか、といった法や制度の整備も課題として取り組む必要があると考えています。
また、最近は小型ドローンの活用にも力を入れています。救助隊がすぐには入り込めない災害現場で、倒れている人のもとへ小型ドローンを飛ばし、早く救助したほうがいいかどうかを判定するなど、新たな活用法を模索しています。たとえば、呼吸の有無や状態を評価するなら、小型ドローンを傷病者の腹部に軽く乗せるだけでも、カメラ映像の上下の動きですぐにわかります。この研究は論文がアクセプトされました。このようにドローンをただ搬送に役立てるだけでなく、医療的な付加 価値を生む形で貢献させることを目指しています。

佐久間病院屋上でのドローン(イームズラボ社製)搬送試験の様子

富士山診療所レスキュー隊との救助協力

救急の現場で活躍するノバ製品

30秒でクレアチニンを測定し、造影CTの利用を判断できるクレアチニン測定装置を活用

救急部で活用しているノバの製品は、スタットセンサー エクスプレス i クレアチニン(SSi)です。指先穿刺によって採取した血液 を、テストストリップに点着するだけで、約30秒でクレアチニン測定結果が判明します。
なぜ、クレアチニンが重要かと言うと、救急の現場では、重症の方に造影C Tを使いたいケースがよくあるからです。クレアチニンの値に問題がなければ、すぐに造影剤を使えますが、高い場合は造影剤が使えない場合があるので別のアプローチを考えなくてはなりません。SSiを導入する前は、検査部に回してクレアチニン検査の結果を待つ必要がありました。すると、どうしても30分はかかってしまいます。造影剤を使えるかどうかわからない間、ただ待っているよりはということで、取り急ぎ単純CTを撮影します。しかし、「やはり造影CTで見ることが必要だ」ということになり、それからクレアチニンを測定し、その結果を見てから造影CTを……と、二度手間になることもしばしばありました。
SSi導入以降は、血糖値を測定するのに近い気軽な感覚でクレアチニンの値を測れるので、非常に重宝しています。おかげで、時間的、人的、患者さん的に不利益となる事態を大幅に減らせています。造影CTの使用に対して、ご家族から承諾を得る際にも、安心していただけるのでよかったと思います。

クレアチニン測定装置「スタットセンサー エクスプレス i クレアチニン」(医療機器届出番号 13B1X10094003012)

院外活動では、ラクテート濃度が重症化リスクの指標の一つに

昨今のコロナの状況下では、ノバ製品の活用シーンは増えるのではないかと思っています。患者さんを全員病院で受け入れることが難しい状況が続き、自宅や施設への訪問医療が増えるでしょう。そこで重要になるのが、重症化リスクや状態を評価し、優先的に入院が必要な患者さんを判断することです。その評価には検査が必要ですが、病院外では当然のことながら、検査できる環境が整っていません。でも、ノバ製品は携帯可能で、その場ですぐに測定結果を出せます。特に、「スタット ストリップ エクスプレス2 ラクテート、ヘモグロビン&ヘマトクリット」でラクテートを測れることは非常に役立つと思います。ラクテートは重症化リスクの一つの指標となりますし、ワンポイントだけではテキストなく、時間経過による変化を測ることで、全身の状態の経過も評価できるためです。
ノバ製品によるラクテート濃度の測定は、災害現場のトリアージでも有効性が高いと考えます。トリアージは迅速さが求められるため、呼吸がないから「黒」、循環器系などに問題があるから「赤」、歩けるから「緑」、というように簡易に評価されています。しかし、そこに重症化リスクの目安となるラクテート濃度の測定を加えることで、よりトリアージの精度向上が期待されます。現場での傷病者の重症度については、医師でも見解が分かれるところです。そこに、一つの客観的指標として、ラクテート濃度測定は重要になってくるかもしれません。

ラクテート、ヘモグロビンおよびヘマトクリット測定装置「スタットストリップ エクスプレス2 ラクテート、ヘモグロビン&ヘマトクリット」(医療機器届出番号13B1X10094008011)

院内で待つだけではなく、外へ打って出る医療へ

今は、AIも日常的に使用していて、国内外の医療技術も進化してどんどん普及しています。今までの既成概念に囚われていると、進化し続ける医療に対応できなくなると思います。そのため、むしろ時代の流れをつくるぐらいの気持ちで、大学病院という恵まれた環境を活かし、どんどんチャレンジしていきたいと思います。
具体的には、患者さんが来るのを待つのではなく、外に出るような医療を意識して、病院内外での活躍を目指したいと思います。さらに、医師の診療負担を減らす医師の代用となる新しいツールも積極的に取り入れたいですね。
ノバ社のPOCT製品のラインナップも、やはり病院外での活動での活用できるものを期待したいと思います。訪問診療でも、容態の悪い患者さんのもとに駆け付け必要なデータをすぐに測定できれば、救急車で搬送するかどうかを判断することが非常に容易になります。いずれにしても、救急の現場にいる医療従事者は、時間効率を重視する人が多いので、結果の出る時間が少しでも短いツールがあるなら、圧倒的にそちらを選びます。ノバの製品は、そのような場面で貢献してくれるのではないかと思っています。新しい取り組みに挑み続け、医療の既成概念を超えていきたいと思っています。

搬送試験のため佐久間病院上空を飛ぶドローン(イームズラボ社製)

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