救急医療現場での新たな取り組み
新たな心肺蘇生法、災害医療でのドローン活用を研究
浜松医科大学医学部附属病院は、一次救急から三次救急まで幅広く患者さんを受け入れています。年間に受け入れている救急車は約4,000台で、国公立の大学病院としては比較的多いのではないでしょうか。さまざまな専門科が充実しているため、救急で受け入れた後も安心していただける体制となっています。
救急部は、災害医療にも力を入れており、DMATとして各種不測の事態にも対応しています。2020年2月に発生したダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス感染の際も、当院のDMATメンバーが活動に参加しました。このように、救急医療と災害医療の両方に力をいれて取り組んでいます。
私自身のリサーチの一つとしては、新たな心肺蘇生法の開発を研究しています。もともと心肺蘇生は、手を組んで胸骨圧迫を行いますが、これは非常にハードな処置です。現場に遭遇した力や身体の弱い方、子ども、お年寄りが、心肺蘇生できるのかというと、なかなか難しいのが現状です。それを他の手法や技術で代替できないかを研究しています。その一つとして、台に乗り足で胸を押すという方法を提案し、論文で発表しました。海外のレビュアーからも多くの反応があり、女性ドクターなどからは一定の支持を受けています。この研究の成果によって、適切な心肺蘇生ができる人が増え、救命の可能性が広がればと思っています。
また、災害や救急の現場でのドローンの活用にもアプローチしています。
検体や医薬品、輸血用血液の搬送に、大型ドローンを活用する実証実験を関係機関と大学が連携して取り組んでいます。実績としては、富士山での登山者救護試験があります。富士山診療基地と要救助者のいる現場、ドローン発着地点のコミュニケーション方法、最適な医療機材の運搬、自律航行での搬送などを検証。険しい斜面でも迅速に機材を運搬でき、霧や夜間でも自律航行できる有効性などが確認されました。
今後は技術面だけでなく、どのルートを飛ばすのか、横断する土地や山地の所有者の許可はどうするか、といった法や制度の整備も課題として取り組む必要があると考えています。
また、最近は小型ドローンの活用にも力を入れています。救助隊がすぐには入り込めない災害現場で、倒れている人のもとへ小型ドローンを飛ばし、早く救助したほうがいいかどうかを判定するなど、新たな活用法を模索しています。たとえば、呼吸の有無や状態を評価するなら、小型ドローンを傷病者の腹部に軽く乗せるだけでも、カメラ映像の上下の動きですぐにわかります。この研究は論文がアクセプトされました。このようにドローンをただ搬送に役立てるだけでなく、医療的な付加
価値を生む形で貢献させることを目指しています。
佐久間病院屋上でのドローン(イームズラボ社製)搬送試験の様子
富士山診療所レスキュー隊との救助協力